2022年 口腔乾燥症の新分類
4学会合同口腔乾燥症用語・分類検討委員会作成
(日本口腔内科学会、日本歯科薬物療法学会、日本老年歯科医学会、日本口腔ケア学会)

 

定義:口腔乾燥症とは自覚的な口腔乾燥感または他覚的な口腔乾燥所見(唾液の量的減少と唾液の質的変化を含む)を認める症候をさす。

1.唾液分泌量の減少あるいは分泌唾液の質的変化があるもの(唾液腺機能障害性口腔乾燥症)
Xerostomia with hyposalivation or altered salivary composition(Xerostomia induced by salivary gland dysfunction)

1) 唾液腺実質障害(唾液腺実質障害性口腔乾燥症)
Salivary gland damage-induced xerostomia

 (1)唾液腺形成不全または欠損
 ・ 唾液腺無形成
 ・ 唾液腺の摘出または外傷

 (2)唾液腺組織の器質的変化または障害
 ・ 唾液腺腫瘍
 ・ 慢性唾液腺炎
   自己免疫疾患(Sjögren症候群、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、強皮症、橋本病)
   IgG4関連疾患
   慢性移植片対宿主病
   細菌感染症
ウイルス感染症(HIV、CMV、C型肝炎ウイルス)
 ・ 薬剤性唾液腺組織障害
   抗悪性腫瘍薬、など
・ 頭頸部の放射線療法

 (3)唾液腺管閉塞
 ・ 唾石
 ・ 粘液栓
 ・ 線維素性唾液管炎

2) 唾液分泌刺激障害(分泌刺激障害性口腔乾燥症)
Interfered salivation stimulation-induced xerostomia 

(1) 中枢性唾液分泌刺激障害(中枢性分泌刺激障害性口腔乾燥症)
 ・ 精神疾患
 ・ 神経疾患・障害(Parkinson病、Alzheimer病、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)
 ・ 脳外傷
 ・ 脳腫瘍
 ・ 更年期
 ・ 精神的ストレス
 ・ 薬剤の副作用
   αアドレナリン受容体(抗高血圧薬、三環系抗うつ薬)
   ドパミン受容体 (抗Parkinson病薬、抗精神病薬)、オピオイド受容体 (麻薬性鎮痛薬)
   セロトニントランスポーター (SSRI)、ノルアドレナリンとセロトニントランスポーター  (SNRI)
   ノルアドレナリンとセロトニン受容体 (NaSSA)

 (2)末梢性唾液分泌刺激障害(末梢性分泌刺激障害性口腔乾燥症)
 ・ 咀嚼機能低下
   咀嚼筋、表情筋の筋力低下、不適合義歯・歯の欠損
 ・ 末梢神経損傷
   顔面神経損傷 舌咽神経損傷
 ・ 口腔感覚障害
   味覚障害
 ・ 薬剤の副作用
   ムスカリン受容体(三環系抗うつ薬、泌尿器官用薬、消化管鎮痙薬、抗ヒスタミン薬)、
   βアドレナリン受容体(抗高血圧薬、抗不整脈薬、抗喘息薬、気管支拡張薬)、
   カルシウムチャネル(Ca拮抗薬)

3)全身代謝性障害(代謝障害性口腔乾燥症)
 Metabolic disturbance-induced xerostomia

 ・ 脱水
   透析療法(血液透析、腹膜透析)、皮膚から水分喪失(発熱,多汗)、
   消化管からの水分喪失(嘔吐、下痢)、胸水・腹水貯留、糖尿病、尿崩症、
   尿濃縮能低下(多尿による体液喪失)、甲状腺疾患(橋本病を除く)、利尿薬、など

4) 特発性(特発性口腔乾燥症)
Idiopathic xerostomia (unknown factors)

2. 唾液分泌量の減少と分泌唾液の質的変化のいずれもないもの
 (非唾液腺機能障害性口腔乾燥症)
 Xerostomia without hyposalivation and altered salivary composition
 (Xerostomia without salivary gland dysfunction)

1) 全身的な原因によるもの
 ・ 精神疾患
 ・ 心因性を思わせる原因不明疾患
 ・ 貧血

2) 口腔に原因があるもの
 ・ 蒸発 (蒸発口腔乾燥症)
   口呼吸の習慣、鼻閉、顎変形・歯列不正、顎関節脱臼、など
 ・感覚障害
   口腔内灼熱症候群、口腔粘膜の障害、など

3) 薬剤性

4)特発性

注1)本分類は、口腔乾燥症を原因により分類した。

注2)唾液の量的減少とは、ガムテストにて10分間で10ml以下、Saxonテストにて2分間で2g以下、
  安静時唾液量にて15分間で1.5ml以下の少なくともいずれか1つに該当する状態。

注3)「唾液腺管閉塞」とは、唾液腺管の閉塞による一時的な唾液分泌量の減少のことではなく、
  長期の閉塞により唾液腺に慢性炎症が生じることにより唾液分泌量の減少をきたした状態をさす。