日本口腔内科学会
理事長 里村 一人

第33回日本口腔内科学会総会・学術大会におきまして、皆様方のご支援をいただき本学会の第七代理事長を拝命することになりました。大変名誉なことと心から感謝申し上げますとともに、その責務の重要さに身が引き締まる思いがしております。

さて、本学会の歴史は1991(平成3)年6月に榎本昭二先生を中心として設立された口腔粘膜疾患研究会にまで遡ることができます。この研究会は、1995(平成7)年6月に日本口腔粘膜学会となり、同年11月には日本口腔粘膜学会雑誌の第1巻第1号が発行されました。その後も学会は発展を続け、口腔粘膜疾患の診断・治療に関する研究発表や意見交換の場としてだけでなく、口腔内科学に関する研究や口腔内科的疾患の診断・治療を広く対象とする学会へと発展して参りました。このような経緯を踏まえ、2011(平成23)年9月24日には学会の名称を日本口腔内科学会に改めました。一方、2014(平成26)年12月1日には、学会の活動目的と社会的使命を明確にする観点から、その活動形態を任意団体から一般社団法人へと移行しました。この間、本学会は歴代の理事長、すなわち初代 榎本昭二先生、第二代 藤林孝司先生、第三代 南雲正男先生、第四代 山根源之先生、第五代 草間幹夫先生、第六代 中村誠司先生の優れたリーダーシップのもと、着実に発展を遂げて参りました。とくに、2018(平成30)年10月に発足した専門医制度は、当初5年間の暫定期間を含め、口腔内科学の研鑽を目指す会員の大きな道標となるものと感じております。また、2021(令和3)年2月19日には、多年に亘る念願であった日本歯科医学会の認定分科会となり、さらに2022(令和4)年10月3日には日本歯科専門医機構の社員学会となり、2023(令和5)年7月31日現在、会員数は915名となっております。このように本学会が着実に発展して参りましたのも、歴代の理事長、理事、代議員、会員の皆様のご尽力の賜物と存じ、この場を借りて心より感謝申し上げます。

現在、わが国は高齢化の急速な進行により未曾有の超高齢社会となっています。これに伴い疾病構造も大きく変化し、さらに口腔の健康が全身の健康や健康寿命の延伸に大きく貢献し得ることが明らかとなりました。その一方で、粘膜疾患や口腔乾燥症、口腔心身症などいわゆる内科的治療が主体となる疾患や慢性疾患に対しては、相当数の患者が潜在的に存在していると推定されるにもかかわらず、病因・病態の解明、それによる適切な診断法や治療法の確立が進んでいません。今後は、外科的治療の対象とはならない疾患の病因・病態の解明を目指すとともに、そのような疾患の診断・治療・管理を行う、あるいはより低侵襲な診断・治療を実践する診療分野の確立が重要となってくるものと思われます。一般社団法人日本口腔内科学会の定款には、本学会の目的として、「口腔内科学の基礎的及び臨床的研究の推進、知識の交流、口腔疾患の診断、治療ならびに予防の発展を期すとともに、会員相互の親睦と国民医療の向上に資すること」と明記されており、本学会はまさにこのような社会的要請に応えることを目的とした学会であり、国民からの大きな期待に応え得る学会と確信しております。今後は、理事、代議員また会員の皆様のご協力を得ながら、これまでの本学会およびわが国における口腔内科学の歩みを滞らせることなく、さらに発展させられるよう精一杯努めさせていただく所存です。

このために、理事長就任に当たり、以下のような短・中期目標を掲げさせていただきたいと思います。この目標のいずれを取りましても、学会会員の皆様のご理解と積極的なご支援、ご協力が不可欠です。是非とも日本口腔内科学会発展のため、皆様方のご提案やご要望、忌憚ないご意見をお寄せいただくとともに、本学会の活動により積極的にご参加いただきたく、謹んでお願い申し上げます。

1)新規入会者の確保による会員数1,000名の確保
2)日本歯科専門医機構社員学会としての専門医制度の充実
3)日本歯科医学会専門分科会への昇格
4)口腔内科的疾患に関する学術研究の推進
5)目的を共有する日本口腔外科学会、日本口腔科学会、日本口腔診断学会、日本臨床口腔病理学会等の国内関連学会との連携強化
6)The American Academy of Oral Medicine、The European Association of Oral Medicine等の国外関連学会との連携強化